コラム

空家

京都市が空き家等に対し「別荘税」を導入

十年以内に企業の破産にあたる「財政再生団体」に転落する危機に直面している京都市。それを受け21~25年度の5年間で計1600億円の収支改善に取り組む行財政改革案を公表しました。将来の借金(市債)返済のために積み立てた基金で赤字を穴埋めする会計手法が限界に陥り、財政運営の抜本的見直しを迫られることになりました。それらの一つの柱として導入されることとなったのが熱海に続き国内二例目となる「別荘税」です。

所有しながら生活していない「非居住住宅」の戸主に対し、法定外普通税として新たに課税する方針です。財政難への対応に加え、首都圏や海外の富裕層に市内のマンションや、空き家が別荘などのセカンドハウスとして買われ、京都の未来を担う子育て世代が住まいを確保できず市外に流出している実態も踏まえたものです。

二〇一八年に導入した宿泊税に続き、新税で年間最大約二十億円の税収が見込まれます。京都市では近年の観光ブームを受け、首都圏や海外、特に中国の富裕層が物件を競って買い、マンション価格が急騰する一因となっていました。住民票の届け出がないため、市民税の税収が見込めない上、30代の市外転出に拍車をかけているとし問題とされています。

そこで京都市は十年ぶりとなる「市住宅マスタープラン」の改定案をまとめました。子育て世帯の市外流出が進む危機感から「居住の促進」を大きな柱に据え、若い世代でも手が届きやすい中古物件の流通促進など今後力を入れていきます。改定に当たっては、インバウンド需要に伴う地価の高騰などで子育て世帯が市内で住居を購入しづらく、「京都離れ」を招いている現状を大きな課題として捉え、改定案では、若い世代の受け皿として比較的安価な中古物件を想定しました。市場に出回っていない空き家が市内に約45000件あることから、新税「別荘税」によって空き家の流通を活発化させる方針です。また、既存の分譲マンションの半数余りが十年後には築30年以上になることから、官民で管理状況を評価し、良好な物件は築年数が長くてもローンを受けやすくする仕組みの導入を目指すとした。

新築についても若者らに選ばれるよう「良質化」を進めていきます。子育て施設の併設など地域への貢献が期待できるマンション建設計画には、高さや容積率などの規制緩和も積極的に検討するほか、最新の省エネルギー技術を取り入れた一戸建ての普及も推進する。京都市は京都で暮らす魅力をより広く知ってもらうと同時に、いざ住みたいと思ったときに選択肢がある環境をつくっていく方針です。